バッハ無伴奏ヴィオラ組曲(原曲はチェロ) PHCP 11057 ヴィオラ:今井 信子

今井信子

このところヴィオラの魅力にとりつかれている音楽ファンが急増しているという。
このブームをつくったのは、バシュメットやカシュカシャンやツィンマーマン そしてヴァイオリニストでありながら傑出したヴィオリストでもあるズッカーマンらの積極的なソロ活動である。

そこに忘れてはならないのが、深井碩章、店村眞積、川崎雅夫、豊嶋泰嗣、最近では川本嘉子、清水直子ら優秀な日本人演奏家のこの分野での活躍ぶりである。
その日本人のヴィオリストの草分け的存在が今井信子である。
今井信子は、「ヴィオラの内省的なところや和を尊ぶ精神は、日本人向きかも知れない」と言う。

彼女を知らない人でもサイトウキネンオーケストラや水戸室内管弦楽団での彼女の活躍ぶりは多くの方がTVなどで見ているはずである。
彼女はカザルスホールでヴィオラスペースという一連のヴィオラコンサートを企画し、プロデューサーとしても注目を浴びている。

バッハの無伴奏チェロ組曲。
チェリストにとって「旧約聖書」とも言われるこの名曲に別の楽器で踏み込むのは非常に勇気のいることである。
私の知るところでは、ギターやコントラバス、フルートで挑戦した例を知っている。

そのなかではヴィオラはチェロのちょうどオクターヴ高い調弦をすることもあり、この曲を弾く上で最も違和感の無い楽器であろう。
そのため無伴奏チェロ組曲をヴィオラで弾く試みは別段新しいことではない。

普通、音域がオクターブ高くなると、緊張感ばかりが高まってしまうのであるが、今井の演奏にはそんなところは微塵も無く、 オクターブ高いという制約を全く感じさせない見事なもので、気負いの無い、深く、優しく、豊かなバッハの世界が展開される。

さて、今井によればタングルウッドの芝生に寝転んで聴いたR.シュトラウスの「ドン・キホーテ」が彼女がヴィオラに魅せられたきっかけと言う。
そのときの演奏が「地味で主張する必要のない楽器」というそれまでの彼女のヴィオラ観を一変させたのである。

ミルトン・トーマス

それから1年、プエルトリコのカザルス・フェスティバルを聴きに行った今井はそこでヴィオラ首席のミルトン・トーマスに個人レッスンを申し込む。
そこで弾いたのが、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュードであった。

実は、この時の師匠ミルトン・トーマスもバッハの無伴奏チェロ組曲をCDにしている。(WWCC-7231~32)
ここで注目すべきはこの録音でミルトン・トーマスは新作楽器日本人の飯田 裕氏の製作になるものを使っていることである。

演奏の所為か、録音の所為かはたまた楽器の所為かはわからないけれども、 こちらの方が今井よりも少し硬質でちょっと重心が高目の印象がある。

ライナー・モーク

実は飯田 裕氏の楽器で録音したバッハの無伴奏チェロ組曲はまだ他にもあって、ライナー・モークも組曲の1番と2番をCDに収めている。(WWCC-7214)
同じ製作者であっても違う楽器で奏者も録音場所も違えば音が違って来るのは当然であろうが、力強さという点ではトーマスのCDとモークのCD、 何か共通しているような気がするのは私だけの印象だろうか。

いずれにしても新作楽器の音がCDになっているのは大変貴重なことである。
今井信子は私の推測ではガルネリを使用されたのではないかと思うが、いずれにしてもオールド楽器には違いない。

 

皆さんは新作楽器とオールド、今井信子とトーマス、モークどちらに軍配をあげられますか?


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